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      ケムの日々是好日

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Golf Journal

やったー、竜二くん優勝!

今田竜二がついに初優勝!うれしいニュースだが、私にとっては「えーっ!」という事態だった。

というのも、私はちょうど一時帰国からNYへ戻る途上。
なぜか今回は直行便が取れず、アトランタ乗り継ぎ便だったのだが、その乗り継ぎ中のアトランタで今田優勝のニュースが飛び込んだ。

TPCシュガーローフまではアトランタ空港からタクシーで40分ぐらいで到着できる。
「よし、すぐにタクシーに乗ろう」と思ったのだが、問題は飛行機だった。
航空会社に事情を話し、「アトランタからNYへの便には乗らない。
今夜の最終便か、間に合わなければ明朝の便に変更する」と告げて空港の外に出ようとした。

しかし、航空会社いわく、
「アナタの荷物がすでにNY行きの便に積み込まれているのだから、荷物だけ載せて人間が乗らないのは、
テロリストが爆弾入りの荷物を積んで自分は乗らないというのと同じ扱いとなり、飛行機に積まれた
すべての荷物を飛行機から引っ張り出してアナタの荷物を探し出して降ろすという大変な作業になる。
だから、絶対に許可できない」

と主張された。どうやらアメリカの航空法に違反する行為らしく、かなり粘って交渉したが、最終的には、
やっぱりNYへ飛ぶ飛行機に乗らざるを得なくなってしまった。それが、残念で悔しくて、たまらない……。

だが、電話で今田の肉声を聞くことができた。
今田は開口一番、「いやー、久しぶりに勝ちました~!」。
初優勝なのに「久しぶり」って、どういうことだと首を傾げる方々。忘れてはいけません。
今田はネイションワイドツアー時代に優勝しており、今回の優勝はPGAツアーでは初優勝でも「勝利」としては
04年のBMWプロアマ優勝以来、4年ぶり。だから彼は「久しぶりに勝った」と言ったのだ。

昨年暮れのインタビューでは「勝ちたいけど、勝つぞとは言えない」と語っていた今田。
米ツアーで優勝するぞと言い切れる選手なんて、タイガーやミケルソンみたいなほんの数人しかいないのだと
今田は言っていた。けれど今週は、昨年の惜敗を指して、「このコースには借りがある」と何度も心の中で
繰り返し、借りを返してやろう、絶対に「勝つぞ」と思っていたそうだ。


「勝ちたい」から「勝つぞ」へ。
勝利への意欲を強め、高めたことで、勝利の女神が微笑んでくれたのだろう。

この優勝で、今季の残る3つのメジャーも来年のマスターズも出場できることになった。
「今はまだ先のことが何も考えられない。でも、夢だったマスターズに出られるのは、何よりうれしい」

マスターズに出ることを夢見て14才で単身渡米して以来、すでに17年の歳月が流れた。
長い長い戦いの末、彼が勝利し、夢を叶えたことは、ジュニア時代から今田を応援してきた「母親」
のような私にとっても「息子」の快挙のように思えて、ものすごくうれしい。
だからこそ、彼の勝利の瞬間をこの目で見られなかったことが、ものすごく悔しい--。


初優勝を遂げた今田竜二は今週はオフ。
とはいえ、優勝したから疲れて休んでいるわけではなく、今週のコロニアルには元々エントリーしていなかった。
本当なら、このオフウィークはのんびりするはずだったのだろうが、優勝直後の彼は大忙しの様子。
なんせ携帯電話の留守電は満杯でメッセージが入らない状態。
今田のマネージャーは「とにかくテンヤワンヤで大変だよ~」と、うれしい悲鳴を上げている。

初優勝後の今田竜二にメモリアルトーナメント会場で会った。
「おめでとう!」と声をかけると、ちょっぴり照れ笑いしながらも、さすがにうれしそう。
「ありがとうございます」。
固い握手を交わしたら、私がうれし泣きしてしまいそうになったが、
今田本人は「結局、うれし泣きはしなかったですねえ」。


米ツアーでは優勝後に初めて試合に出る際、練習日に記者会見に呼ばれるのが慣わしだ。
今田は今日、水曜日にインタビュールームに呼ばれ、アメリカ人の記者たちから、あれやこれやと質問を受けた。
いつも思うのだが、今田は英語での質疑応答のときは、ものすごく毅然とした態度に見えるのに、
日本語で我々と話すときは「うーん……」と考えながら、ちょっぴりのそのそ話すから面白い。
まあ、やっぱり日本人どうしとなると、なんとも言えない安心感のようなものがお互いにあるのかなと思う。


そうだよねえ。日本ツアーの選手たちは、クラブのことにやけに詳しいのだが、アメリカの選手たちは本当にそういうことを知らないのだ。
自分のドライバーが何インチかも知らないことが多く、シャフトのフレックスやバランスなんかは、まずもって知らない。
ヘッドが何CCかだって、やっぱり知らないのである。ツアーレップから渡されたものを打って、感触が良ければ使う。
彼らのクラブ選びは、それだけなのだから。

今田が突然、「ああ、あいつなら知ってますよ、たぶん」
と言って、練習場のすぐ横の打席にいたニック・ワトニーに大声で聞いた。

今田「へい、ニック。この905って、ヘッドは何CCだ?」
ワトニー「あー、それは、確か485CCじゃないの?」(きわめて真面目な顔でした!)
今田「えー、そんなわけないだろう?だって460CCがMAXだぞ!それぐらいはオレだって知ってる!」
ワトニー「えっ、そうなの?????」

周囲にいた選手やキャディは大笑い。日本の方々が聞くと「ホントかよ?」と思うかもしれないが、
これは米ツアー会場なら、いかにも起こりうる1シーンだ。

間もなく、プレーオフを戦った相手、ケニー・ペリーが練習場に登場。
今田は自ら歩み寄り、ペリーと固い握手を交わした。
「もっと、どんどん勝てよ」と、ペリーはベテラン選手らしい言葉を今田に贈った。

今田は、こういうアメリカの選手たちと肩を並べながら、17年間、ゴルフの腕を磨いてきたのだなあと、つくづく感じた。
アメリカツアーにおいて、アメリカ人選手たちの中にいても、まったく違和感を感じさせないアメリカ人のような日本人。
しかし、日本人に親しみを感じ、日本人との会話に安堵感さえ見せる日本人。
それが、今田竜二だ。
いやー、竜二くん、あらためて、優勝おめでとう!


ともあれ、記者会見以外にも、今田は大忙しだ。
オフだった先週も日本とアメリカ、双方のメディアからさまざまな取材が殺到したそうだ。
英語がネイティブ並にうまい今田の場合、日本人選手といえどもアメリカのメディアから取材が入り、
それがこなせるところが、すごい。
今日も会見の直後、アメリカのラジオに電話で出演していた。
そんなことをそつなくこなす姿に、チャンピオンの貫禄さえ漂っていた。


そんな今田がやっと一息ついた後、練習場へ向かった。
球を打つ今田のそばでバッグを覗くと、優勝したときに使っていたタイトリスト905Rが目についた。
今年、ワコビア選手権あたりでは905Sを使っていたが、プレーヤーズ選手権からは905Rに変え、
AT&Tクラシックも905Rで臨み、優勝した。

舩越「ねえ、竜二くん。これって何CCだったっけ?430?435?あれっ?」
今田「えー、そんなこと僕が知るわけないでしょ?」


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